日本では勤務中に眠ることは勤勉の証拠であるとみなされている

こんな記事を見つけた.
Napping in Public? In Japan, That’s a Sign of Diligence - The New York Times
朝日新聞にも翻訳記事?あり.
http://www.asahi.com/articles/ASK1V3S91K1VULPT002.html?iref=btmob

In most countries, sleeping on the job isn’t just frowned upon, it may get you fired.

But in Japan, napping in the office is common and culturally accepted. And in fact, it is often seen as a subtle sign of diligence: You must be working yourself to exhaustion.

「たいていの国では居眠りはクビ案件だが,日本では許容されているどころか,疲れて職場で眠り込むほど仕事している証とさえみなされる」

そんなことないと思うけどなあ.

ざっくり,挙がっている「寝るシチュエーション」は,以下の4つ.

    1. 職場で勤務中に寝る
    2. 激混みの通勤電車で寝る
    3. 公園とか,要するに往来で寝る
    4. パーティとか「社会的な状況」で寝る

これらのどれもが,社会的に十分ありうるどころか,なんらかの美徳として許容され賞揚されている,というような話.
1. については上で触れたように,疲れ切って眠り込むほど勤勉に働いているという話.また,後述の4. とも似た話で,会議には「とにかく出る」ことが重要で,その上で寝ていることはさしたる問題にならない,みたいな.
2, 3. については,眠ることそのものとは違うが,まあ日本は安全(だと信じられている?)のでみんな安心して寝ている,みたいな.
4. については,辞去することよりその場に参与し続けることを選び,結果眠ってしまった,という一種の美談として処理されている場に遭遇したことがある,というコメンテーターの述懐が載っている.

少なくとも1. については完全に誤解だと思うけどなあ.勤務中に寝てていい職場なんておよそありそうにないが.せいぜい昼飯を急いで食ってちょっとだけ寝るくらいか,もしくは残業中に人気の絶えたオフィスでちょっと寝てまた残業を再開するとかの.後者は十分に,勤勉の表象として成り立つように思う.あるいはコメンテーターの先生が日本にいた時期には,もっとゆるやかだった(そしてもっと全体主義が当然視されていて,「帰るよりいつづけるほうが立派」みたいな認識がまかり通っていた;こっちは集団によってはまだ堅牢だろう)のかもしれない.

これをなんらの批判もせずに朝日が翻訳記事を載せている(もしかしたら有料記事部分には批判が載っていたのかもしれないが,そういうのは見えるところに書いて欲しい)ところをみると,朝日新聞社は寝てても大丈夫な職場なんだろうか.そんなことはないと思うが.